原作の鉄郎は切れない

原作最終回の鉄郎は殴りません。罵りもしません。終着駅に降り立った鉄郎を出迎えた、案内人のメノウは、鉄郎に機械の体のカタログを示しながら次のように告知します。「女王プロメシューム陛下があなたを見込んで、惑星大アンドロメダを支えるネジにするよう、指示なさいました。拒絶するとメーテル様が責任を問われて死刑に処されます」。メノウのこの宣告に対して鉄郎がどう反応したかというと、「いいよ、なってやるよ、ネジに。メーテルは命がけでいっしょに旅をしてくれたんだ」――と、鉄郎はおとなしく指示に従うのです。
もっともこの直後に、女王の謁見室に赴く途中で、「あなたはおとなしくネジになることを承知して、女王陛下に近づくチャンスを狙っているのではありませんか?」と、意図をメノウに見抜かれてしまうのですが、それはおいても、結局最後まで鉄郎はメーテルを罵りも殴りもしません。原作の鉄郎がメーテルに対して〈切れる〉ということはないのです。