「女性」の視点から

第二部において、女性論客の一人は、通常混同されがちな「ボーイズラブ」と「やおい」が異なる対象を指すことを丁寧に説明していた。「やおい」は基本的にパロディである。それは通常、男性同士が愛し合うことなどまったく想定されていない少年漫画やアニメを対象として、キャラ同士を絡ませるものであり、まったくのオリジナルである「ボーイズラブ」とは異なる。そう説明しながら彼女は、自分は共学だったが、たとえばスポーツサークルの男子同士が草原に寝転がって「おまえ、よくやるよなあ」「おまえこそ」などと〈友情〉を確かめ合っているのについて、大いに「妄想」を逞しくしたと言っていた。
ノリにノッた会場において、彼女のこの発言は無論のこと大爆笑をもって迎えられた。だがそうやって笑っていた連中の中に、その言葉の意味するところを理解していた男性が、一人でもいただろうか。彼女が言ったのは、――当の本人たちにその自覚がなくとも、あなたたち男は、誰もがみなただの〈ホモ〉にしか見えない。女性の視点からは、〈男同士のつながり〉と、実際に肉体を重ね合わせる男性同性愛者とは、まったく区分できない。本質的に同じものにしか見えない。――彼女が言っているのは要するにそういうことなのだ。それを知った上で、なお彼らは笑っていられたのだろうか?