『天敵の多い光景』についての補足

以下は本人以外にはどうでもよい話で恐縮なのですが、これはもともと半年前、サイトを開く前に書いたものです。正確にいうと、去年の8月頃にはじめてマリみてを読んで(『涼風さつさつ』が出る前後くらいですか)、そのあと二週間くらいして『レイニーブルー』くらいまで読んだ時に、とつぜんモリモリと意欲が湧いて衝動やみがたく(^_^;)、書き下ろしたのがもとです。
それまで私は、SSを書くはおろか、小説に類するようなものは何ひとつ書いたこともなかったので、何でこんな蛮勇を奮い起こす気になったか、いまだに分かりません。
ともあれ、書いたものを、私にマリみてを読ませた張本人の砂織さまに見せたら、意外なことに関心をもってくださったうえ、様々な助言を与えていただいたのですね。砂織さまは自身の紹介ページに書いておいでのとおり、ジャンルこそ違えどエンターテインメント業界での歴とした専門家ですし、純文学を含めた小説についても、日ごろから研鑚を積んで一家言も持っておいでになる。その指導をもとにして、最初は9000字程度だったのをほぼ倍にして書いた二回目の原稿が、今回アップしたものの原型という感じになります。
もっともそのあと、砂織さまの指導を受けながら、正確にいうと十回ほども書き直したのですが、原型は砂織さまがご自身の日記の中で「ずっと読みやすくなった」と評して下さった二回目の時点で定まっておりました。とくに第三チャプターの、柏木と蓉子のやり取りは、この二回目の時点からほぼそのままでほとんど動かしていません。そしてここがまあ、いちばん書きたかったくだりではあるのです。柏木に関するSSは、少ないながらも当時からいくつかありましたが、ギャグもふくめて正直申し上げると、あまり感心させられたことがない。彼の心理や態度はこの程度には読み込んでおいたほうが良いという、――偉そうに言いますが〈基準〉を出したいという欲があったのです。
今にしてみればよくムチャクチャなことをしたものだと、他人の書いたものを読むような気で見返しております。原作に例のない柏木の語りを無理やり作るなんて、今でしたらさすがにいたしません。一つ一つのセンテンスも長すぎるし、しかしそもそも全体も長すぎる。完成時点でL'eau de roseに寄稿するはずだったのですが、それが結局は、最後の校了頃に他方で書き下ろした『真夏のジーンズ』との差し替えになって、当編自体を結局お蔵入りにしてしまったのは、つまるところ初作にしては、またSSにしては〈長すぎた〉といった事情もありました。
とはいえ放っておくのもなんなので、とりあえずアップすることに決めたのです。いずれあらためて砂織さんに寄贈する機会があれば、その折に多少手を入れることもあるかも知れませんが、今回の原稿はほぼ半年前に校了したときのままのものです。言葉遣いもふくめて、下手に手を入れると全体が崩れるという予感があるものですから。長いので何ですが、多少の愛着もあるので、本拙作については一言でも良いので感想などいただけるとありがたいものです。