作ることの〈モラル〉

肝心なのは、限られた時間内でいかに刈り込むかではないのかしら。もうすぐ「王の帰還」が公開される『ロード・オブ・ザ・リング』の第二部「二つの塔」。監督のピーター・ジャクソンは、一行が離散して物語が分岐する長編であるこの第二部をバッサリと刈り込んで、その上でアラゴルンの一行を中心とするヘルム峡谷での戦闘にかなりの時間を割り当て、そこにクライマックスを持ってきた。――原作付きの映像化の、取捨選択の鑑識眼ってそういうものでしょう。

それにしてもかつて評論家の大森望が「十二国記にはモラルがある」ということを書いていて、しかしメッセージ性があることと、いわば〈書き方にモラルがある〉こととは別でしょうと思ったものですけれど。まあ十二国記原作も、五年ほどおいた新刊から、正直言って目に見えて悪くなったし、ともあれ読者が十二国記に人生の慰めを見出すのは別によろしい。いかに読むかは金を払って本を買った、少なくとも読むのに時間を割いた読者の自由なのだから。でも作り手がそれでは困るわね。メシ食ってるんなら、少しは真剣におやりというものよ。