〈らしさ〉の問題

でもって、同時期に上梓されたmafuneさんの『名を。』も、たまたま江利子さまなので、なんか考えたりもするわけですよ。「なんかどっちも凄く〈らしく〉ってよ、モナミ」とか。――え? 私がファンなだけですか? そこのあなた、そうじゃないでしょう、ふふふ。「お方さま、自らの心に正直におなりなされいっ!」(『魔界転生』ジュリーのお言葉)

ちなみにここで言う〈らしい〉とは〈『マリみて』原作と広義的にアイデンティファイしうる〉――つまり〈原作補完系〉狭義には限らない――の意味と定めておくとして。けれども両作の作風は、ちょっと違いますよね。

『最良の日?』は厳密な意味での〈原作補完系〉の作品と見てよいように思います。そこでは『マリみて』原作の文体模倣と視点設定とが厳密に守られ、その語彙や表現も、蓉子の視点であることを踏まえて、蓉子にふさわしい、ないしは蓉子であれば許されるものに限られています。だいたい「ギリシア仮面劇のような顔」などという比喩は、原則として祐巳視点では使えないわよねえ。――つっか原則でなくても無理ですか。「祐巳は思った、これ疑うらくは地上の霜かと」なんて地の文も書けませんわね(笑)

後半の「どつき漫才」にしても、それは原作の設定から合理的に導き出されうる解釈、つまり〈三人だけの状況であれば〈崩れうる/崩してよいだろう〉〉という判断に基づくものでしょう。従って第三者祐巳の登場とともに、三薔薇さまは「いつもどおりの」三薔薇さまに帰還するのだけど、この落ちはSableさんが気まぐれと思いつきで作ったのじゃなくて、むしろ解釈と計算にもとづいた〈必然的な落ち〉なのですね、思うに。

〈らしさ〉のないSSについてはTTGのピーナッツさんがその所以を陳述しておられるけれど*1、同じようにドタバタ喜劇路線で運んでいても、ピーナッツさんの言うような〈らしさ〉無しSSと『最良の日?』とを分けるのは、けっきょくこういった解釈と計算の有無といってよいでしょう。

続きは次回。――って、まだ書こうっていうのね、晶ったら(笑)

*1:TTG http://www7.plala.or.jp/ttg/ 〈裏ページ〉中の〈日記〉11月17日付(二つあるけど一番目の方)