それなりに泣ける『大奥』

ドラマ『大奥』の中盤。菅野美穂演じる御台所・篤姫天璋院)との間に、子供を作ることを望まない家定は「子供をもうけて何になる。政治の道具にされるのは自分一人で十分だ」といいます。「でも人には生きるよすがが必要です」という篤姫に、家定は「狭い鉢に入れられて身動きの出来ない亀は、首をもたげて空を見るしかない。そしてこの世の行く末を思い、〈いずれ今より良い世のなかになる〉」。

――そう信じて、そこに居続けるのが自分の仕事だ、と応答した家定はやがて病に倒れ、篤姫に向かって「自分が死んだらここを出て行け」と遺言します。その篤姫を救うため、大奥に火を放って侵入してきたかつての婚約者・東郷克顕に篤姫は、同行することを拒む。

逆上して「あんな暗愚の将軍に殉ずるつもりか」となじる東郷を、篤姫は振り仰いで「あなたたち男の都合で踏みにじられる、か弱い人間や女たちのことを、あなたは少しでも思いやったことがおありか」と応じ、その厳しい表情に東郷は絶句します。

大奥女中たちの犠牲を顧みず大奥を焼き、家定を暗愚と罵倒する東郷から、もはや心の離れた篤姫は、涙を流しながら「これから先、あなたがどんなに立派になって出世しても、どうか心の片隅に、強者によって踏みにじられる人間がいるということをお忘れにならないで」といってきびすを返し、それまで対立してきた大奥の実力者・滝山と初めて心を通い合わせ、大奥に踏みとどまる決意を固めました。

――上記のセリフはうろ覚えで、ひょっとしたら違うかも。でも大体そういう感じでしたのよ。

それでですね、なんと申しましょうか、全体としては白けつつこのドラマを見ていたのですけど、この辺については比較的感情移入して、鑑賞することが出来ました。是非ごらんなさいとお勧めするほどでもないのですが。