2004-01-12から1日間の記事一覧

嫡庶の別の強化と〈お姉さま〉の消滅

この疑問が『江戸奥女中物語』のおかげで氷解しました。本書によると、六代将軍家宣の死去後――ちょうど18世紀に入ったところ――を境として、それまで曖昧だった将軍正夫人と側室との区別が厳格化する。それまでは正室であるというだけでは、夫が死んでしまえ…

お万の方と右衛門佐だけが何故目立つ?

ところで最近読んだ畑尚子『江戸奥女中物語』(講談社現代新書)によると、本作における吉屋の考証というのはかなり確かだそうですが、それにしても昔から不思議に感じていたことがあって、先述のとおり本書はお万の方だけで半分。続編の上冊は右衛門佐を中…

〈京都=女〉による〈江戸=男〉への抵抗

そのお万の方も右衛門佐も、公家の出身として心情的に朝廷寄りであり、朝廷が幕府の風下に置かれていることに対して〈反発〉しているのですが、肝心なのはそれが必ずしもただの差別意識――無教養、粗野、成り上がりの武家に対する――というわけではない点です…

女子校化した大奥

ところでさすが吉屋というべきですが、この小説における主役女性陣はいずれもみな、いわゆる〈大奥〉っぽい雰囲気がほとんどない。女同士のやり取り、ただし男との関係を主軸にした――を描くというのが〈大奥物〉の常道ですが、本作ではその「男との関係を主…

徳川の夫人とお姉さま

久しぶりに少女小説の大家・吉屋信子の『徳川の夫人たち』を再読しました。続編とあわせて四冊。吉屋がその最晩年に執筆した歴史小説です。正編では三代家光の側室、お万の方・永光院(1624-1711)、『続・徳川の夫人たち』の前半では五代綱吉の側室・右衛門佐…